作者 宇佐楢春
あらすじ
今日がなかったことになっても、この気持ちまでは消えない。
なんでもない日常で、ちょっぴり変わった毎日で。
彼女とわたしの、不器用な想いにまつわるすこしフシギな物語。
今年進学した高校の入学式が三回あったことを、選ばれなかった一日があることをわたしだけが憶えている。
そんな壊れたレコードみたいに『今日』を繰り返す世界で……。
「相沢綾香さんっていうんだ。私、稲葉未散。よろしくね」
そう言って彼女は次の日も友達でいてくれた。生まれて初めての関係と、少しづつ縮まっていく距離に戸惑いつつも、静かに変化していく気持ち……。
「ねえ、今どんな気持ち?」
「ドキドキしてる」
抑えきれない感情に気づいてしまった頃、とある出来事が起きて――。
恋も友情も知らなかった、そんなわたしと彼女の不器用な想いにまつわる、すこしフシギな物語。
この物語の魅力
少し設定が複雑でわかりにくく、
- 主人公の相沢綾香は1日を何度も繰り返している。
- 同じ日は平均して5回くらい繰り返す。
- その繰り返した1日の中でランダムに選ばれた1日が採用され明日を迎える。
- 採用されなかった1日は綾香以外の人間の記憶には残らない。
- 綾香が同じ行動をとったとしても、他人が同じ行動をとるとは限らない。
- 1日を繰り返すことで、肉体は成長しないが精神は成長する。
これらの設定は、最初のほうで説明されますが、設定を常に頭に入れながら読み進めていく必要があります。
何度も同じ日を繰り返してきた綾香は、友達ができてもその日が採用されるかわからず、どの日が採用されるかわからないため、身近な人との会話を慎重にしないと気味悪がられてしまう。
そんなある意味人間関係をあきらめていた綾香が、何度同じ日を繰り返しても自分と友達になろうとしてくれる稲葉未散と出会い、心惹かれていく。
途中までは微笑ましい百合展開。
しかしそんな二人に凄惨とも言える試練が訪れ、綾香は悲壮な覚悟で未散を救おうともがく。
どうしようもない未来を変えようともがく綾香がどうやっても望む未来が得られないと嘆く姿に読者も心が折られかけます。
しかし、心を折られ、投げやりになり、それでもなお未散をあきらめられない綾香に感動させられます。
読むのに少しパワーがいりますが、百合ものや世界系、化物語や青豚なんかの不思議な物語が好きな方ははまると思います。
既刊
- 忘れえぬ魔女の物語
- 忘れえぬ魔女の物語2
・Bookwalker
https://bookwalker.jp/de1bd176c7-f438-4c08-a762-16314df3820e/?acode=x3t49wYt